上野、今と昔 1
 上野公園内、精養軒近くに佇む韻松亭は、明治8年創業。公園の誕生とともに歴史を刻み、あの横山大観がオーナーになったこともあるほどの、趣深い店だ。 
 お昼時ともなれば行列の絶えない人気店だが、訪れたのは平日の12時前。最後の一席に滑り込む。お目当ては、大豆を土鍋で炊き込んだ名物・豆ご飯のついた花籠膳。豆腐や湯葉、生麩を用いた繊細な味わいの料理に舌鼓を打ち、景色を愛でていると、時間に追われている日常をほんの少し忘れられそうだ。 
 そんなことを考えていると、すぐ隣で鐘の音が鳴り響いている。公園ができる前から上野の地を見守り続けてきた、寛永寺の鐘楼だ。昔の面影を残した建物に、美しい景色、美味しい料理、BGMまで揃えば、もはや足りないものはあるまい。 

 さらにこっそりと付け足せば、豆ご飯と赤出汁をお替りして、お腹も十二分に満腹・満足なのだった。
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