帝釈天の庚申 1  
 縁日で賑わう参道を抜ければ柴又のシンボル、帝釈天にたどり着く。

 幼少時の私にとって、初詣と言えば帝釈天だった。でも、参拝の記憶を辿ろうとしても思い出せるのは人の頭だけ。ここがどんなところなのか、実は知らなかった。

 今回は初めて、60日に一度訪れる「庚申(こうしん)」の日に足を運んだ。
 言い伝えによると、人間の体内には「三尸(さんし)の虫」がいて、庚申日の夜、寝ている間に体から抜け出し、その人の行いを天帝に報告するのだそうだ。悪事が報告されれば、寿命が縮められてしまう。そこで、眠らずに一夜を過ごし、寿命が縮まるのを防ごうとしたのが事の始まり。柴又帝釈天では安永8年の庚申日、所在不明になっていた帝釈天の板本尊が本堂修理中に棟の上から発見され、信仰が始まった。現在も、庚申の日には縁日が並び、帝釈堂では板本尊が公開される。

 線香を供え、飲むと病気が治ると言われる御神水を汲み、帝釈堂をお参りする人々の姿……。この日の柴又帝釈天は、情緒ある懐かしい雰囲気と、凛とした空気が同居していた。
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