人形町どぶろく祭り プロローグ |
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着物を着ていると、知らない人に呼び止められることが多い。
浴衣なら「今日はお祭りでもあるんですか?」 着物なら「あらステキ」「若いのに感心ね」などなど。 そんな交流も含めて散歩なのだと、私は考えている。 人形町から日本橋にかけて歩くあいだ いつも以上にたくさん声を掛けられた。 「羽織の襟は折るのよ」 「腰紐はもっと上にして!」 「おはしょりは人差し指1本分ね」 人形町の和菓子屋で、日本橋の上で 私が見よう見まねで着た着物がどんどん直されていく。 時々「襟合わせはなかなかいいわよ」 なんて言われて、少しいい気分。 去り際まで「長襦袢の襟は下から引っ張るのよ!」 と世話を焼いてくれる。 着付け教室など行かなくても 普段着物の師匠は街に溢れているのだ。 人形町の割烹で働くおかみさんは 着物の下にもんぺを履いて自転車を乗り回し、 店に出るときだけ脱いでいるそうだ。 そういう人に、私もなりたい。 |
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