伊勢原の彼岸花 2
 
 薬師と名のつくところに行けば、見るべきものはもちろん、薬師像だろう。しかし、日向薬師で私の興味をひいたのは、本堂や鐘撞堂の茅葺屋根だった。神聖な雰囲気を漂わせながらも趣ある屋根はあちこちに緑が芽吹き、どこかほっとさせてくれる。  本堂脇に祀られるのは、虚空蔵菩薩。看板には「奥の院に祀られていましたが参詣しやすいようにこの霊樹のなかにおうつししました」とある。大木の空洞にすっぽりと収まる虚空蔵菩薩の様子は、木に神が宿っているようで神々しい。
 大木の前には狛犬のように牛と虎がいて、虚空蔵菩薩が丑・寅年の守り本尊であることを意味する。私は残念ながら申年生まれだが、“虚空のように無限の知恵”を少しくらいは分けてほしいもの……そんな都合のいいことを考えていた。
 
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